-----------------------------------------------------------------------  リコーダーJP メールマガジン                          108号 2016. 9. 22. ------------------------------------------------------------------------ ★ごあいさつ★  台風が次から次へとやってきては被害を出しています。被災されたみなさま には心からお見舞い申し上げます。他の皆様もどうぞお気をつけください。  いつもご愛読ありがとうございます。RJPメールマガジン、第108号をお届け いたします。 RJP刊行物総合カタログ http://www.recorder.jp/rjpcatalogue.pdf ■目次■  <ごあいさつ>  1 能舞台バロック音楽会 [森本英希さん] (10/1 滋賀)  2 バロック音楽の諸相 〜カンタータと協奏曲〜 (10/6 北海道・札幌)  3 カメラータ・ムジカーレ 第55回演奏会 (10/8 東京) [再掲]  4 土蔵 de バロック Vol. 8 [そう楽舎] (10/14 大阪)  5 古楽器の調べ バロックの午後 [プチ・フール] (11/4 大阪)  6 ゆかいなゆかいな音楽会 [神谷徹&春日井R.アンサンブル] (11/5 愛知)  7 リコーダーの花束 Vol. 2 [フローエ・フラウ・フレーテ] (11/11 大阪)  8 2016年10月の新刊  9 編集後記 ……………………………………………………………………………………………… ★1 能舞台バロック音楽会 [森本英希さん] (10/1 滋賀) ………………………………………………………………………………………………  バロック・フルートでは関西の第一人者と言ってもよい森本英希さんが、バッ ハのブランデンブルグ協奏曲第5番、管弦楽組曲第2番という、2名作を演奏し ます。しかもバッハ晩年の大作「音楽の捧げ物」全曲演奏というおまけ付き。 http://www.recorder.jp/events/161001.htm ……………………………………………………………………………………………… ★2 バロック音楽の諸相 〜カンタータと協奏曲〜 (10/6 北海道・札幌) ………………………………………………………………………………………………  バッハのカンタータ、アレクサドロ・マルチェロのオーボエ協奏曲などが演奏 されます。バッハではリコーダーの出演もあります。 http://www.recorder.jp/events/161006.htm ……………………………………………………………………………………………… ★3 カメラータ・ムジカーレ 第55回演奏会 (2016/10/8 東京) [再掲] ………………………………………………………………………………………………  神奈川で40年の長きにわたって活動を続けていらっしゃる老舗古楽アンサンブ ルのコンサートです。 http://www.recorder.jp/events/161008.htm ……………………………………………………………………………………………… ★4 土蔵 de バロック Vol. 8 [そう楽舎] (10/14 大阪) ………………………………………………………………………………………………  バロック・オーボエ&リコーダー奏者、赤坂放笛さんとチェンバロの吉竹百合 子さんの息の合った演奏がきけるはずです。赤坂さんにしては「副業」のリコー ダーの曲を多く組んだプログラム。 http://www.recorder.jp/events/161014.htm ……………………………………………………………………………………………… ★5 古楽器の調べ バロックの午後 [プチ・フール] (11/4 大阪) ………………………………………………………………………………………………  リコーダー奏者・財前奈緒子さん、チェンバリスト山下佐智子さんらのグルー プ「プチ・フール」のライブ。財前さんの美しいリコーダーが、これ以上ないと いう名曲でたっぷりと聴けそうです。 http://www.recorder.jp/events/161104.htm ……………………………………………………………………………………………… ★6 ゆかいなゆかいな音楽会 [神谷徹&春日井R.アンサンブル] (11/5 愛知) ………………………………………………………………………………………………  リコーダー演奏家としてよりも「ストロー笛」で有名になってしまった神谷徹 先生と、春日井リコーダーアンサンブルの、老若男女だれでも楽しめるコンサー トです。 http://www.recorder.jp/events/161105.htm ……………………………………………………………………………………………… ★7 リコーダーの花束 Vol. 2 [フローエ・フラウ・フレーテ] (11/11 大阪) ………………………………………………………………………………………………  女性ばかりのリコーダートリオの演奏会。リコーダー奏者・松浦孝成先生の指 導を受けていらっしゃるとのことです。 http://www.recorder.jp/events/161111.htm ……………………………………………………………………………………………… ★8 2016年10月の新刊 ………………………………………………………………………………………………  10月は1タイトル(+1)がリリースになります。(+2は同一内容のA5版 製品です。) ■テレマン 装飾範例つきアルトリコーダーソナタ 第9番 ト長調 http://www.recorder.jp/piece/1/1038.htm  大作曲家テレマンが音楽愛好家のために即興的装飾の手法を範例で教えてく れるソナタ集、正編続編合わせて12曲のうち、第9番です。原曲はフラウト・ トラヴェルソまたはヴァイオリン用となっていて、ホ長調ですが、リコーダー用 に3度高く移調しました。 ……………………………………………………………………………………………… ★9 編集後記 ………………………………………………………………………………………………  名古屋までワグナーの楽劇「ラインの黄金」を聴きに行ってきました。コンサ ート形式としては極限まで演出に気を配ったつくりで、演奏もすばらしく、たい へん楽しい思いをしました。  ところで、私は今回初めて気がついたのですが、「ラインの黄金」の始まりの 趣向は、まるでモーツァルトの「魔笛」を裏返しにしたようなものなんですね。  「ラインの黄金」は、ライン川の妖精である三人の若い女性が、軽口をたたき ながらにふざけ回っているところに、ニーベルング族の小人・アルベリヒが現れ、 妖精たちに求愛します。しかし、彼女たちはアルベリヒに肘鉄を食らわせ、さん ざんに嘲弄します。さらに彼女たちは調子に乗って「ラインの黄金」の秘密をア ルベリヒに語ってしまい、アルベリヒは「愛を断念して、黄金を強奪」する決心 をするに至ります。  これが、楽劇「ニーベルングの指輪・四部作」で語られる壮大な悲劇の、そも そもの発端になりました。  対して「魔笛」では、美男の主人公タミーノが怪物に追われて逃げまどうのを みて、「三人の侍女」が怪物を一撃のもと打ち倒します。ところが、気絶してい るタミーノの美貌に3人して心を奪われてしまい、誰が事件を主人に報告に行く か(逆に言えば誰がこの「イケメンの若い男性」の傍に残るか)をめぐって、言 い争いを始めます。続いて森の怪人パパゲーノのエピソードが挟まりますが、そ の後、やはり侍女たちはタミーノに「悪人」ザラストロについて語り、とらわれ ている美女パミーナを救い出しに行くようそそのかします。タミーノはパミーナ の美しい絵姿に一目ぼれし、「愛ゆえの冒険」を決意します。  かたや3人の妖精(まぁだいたい美女)と醜い小人の男性、他方は謎めいた3 人の侍女(たぶん美女)と、美男の若者。  かたや幕が開いたとたんに言い争い、他方は幕開き後しばらくしてからイケメ ン男子をめぐって言い争う。  かたや3人して醜い小人の求愛をはねつけて嘲笑し、他方は3人して美男の若 者に一目ぼれする。  そして、かたや相手に秘密を漏らしてしまったために、「愛を諦めて宝を強奪 する」という冒険を誘発してしまい、他方は、相手に積極的に秘密を語り聴かせ て、愛ゆえに「宝(のような美女)」を奪い返せと冒険をそそのかす・・・  とまぁ、そんな具合で、似ているといえば似ているような、しかしいちいち大 きく違うような、つまりは、「裏返しのような」趣向だと私は思ったのです。  いずれにせよ、「ラインの黄金」の冒頭の趣向は、「魔笛」なしには考えられ ないものだと私は思いました。ワグナーが意識していたか否かに関わらず・・・  いや、イタリア語のオペラと決別してドイツ語で歌劇・楽劇を書くことに情熱 を傾けた大作曲家ワグナーが、自分以前の「ドイツ語の歌劇」のなかで最も偉大 な作品である「魔笛」のことを、意識していなかったはずはありません。  大作曲家たちも、意外に先輩作曲家の作品の「呪縛」のようなものを背負って いることがあるんですね。  そういえば、ベートーヴェンの唯一のオペラ「フィデリオ」の冒頭をみると、 ベートーヴェンが、どんなにモーツァルトに憧れていたかが、よくわかります。 しかも、その比較対象としては、ベートーヴェンが「不道徳な話」と言って嫌っ ていたという「コジ・ファン・トゥッテ」をまっさきに思わずにいられません。 なぜなら、どちらも「軽い言い争いの重唱」から始まるからです。  そして・・・モーツァルトでは、2人の青年フェランド、グリエルモと老哲学 者ドン・アルフォンゾが、実にスピーディーで軽妙なやりとりをかわし、すばら しく流麗に音楽が流れ出します。  対して、ベートーヴェンでは、求愛する牢役人ヤッキーノと、取り付く島もな く拒絶するマルツェリーネ(上司の娘)の言い争いで始まります。しかし、これ がいかにもベタな内容なのはともかくも、何より、音楽的に、 「軽快軽妙を狙ったが、ぎくしゃくとした不器用な音楽しか書けなかった」 という体の、何ともぎごちない音楽だ、と言ったとて、そう叱られはしないでし ょう。モーツァルトとの差は実に歴然たるものだと感じて楽聖ベートーヴェンが 気の毒になってしまうのは、きっと私だけではないはず。  ですが、そもそも、モーツァルトのオペラの開始の、ロココ的な華やかさ軽や かさは、誰にも真似ができないほどのレベルに達したものだったのではないでしょ うか。その土俵で勝負して、いったい誰が天才モーツァルトに匹敵できましょう。 しかも、ベートーヴェンの本領は、全然違うところにありました。  ああそれなのに、なんでまたベートーヴェンは、苦労に苦労を重ねた、自身唯 一のオペラ、それも「真面目な」オペラである「フィデリオ」の開始を、モーツ ァルトのコメディー歌劇の下手くそな模倣で始めてしまったのでしょうか。もっ と悲劇的な音楽で始めるとか、力強い音楽で始めるとか、静かに打ち沈んだ音楽 で始めるなど、いくらでも道はあったろうに。  しかし、そこが「呪縛」の呪縛たるゆえんで・・・  と、書いていて、今、気づきました(遅い?)  そうか、「男性(アルベリヒ、ヤッキーノ)の求愛と、女性(ラインの乙女、 マルツェリーネ)の拒絶」か!  「ラインの黄金」の開始は、かつてドイツ語で書かれた歌劇として「魔笛」に 次ぐ名作である「フィデリオ」の呪縛をも、受けていたのかも知れませんね。 (RJPディレクター 石田誠司) ------------------------------------------------------------------------  リコーダーJP メールマガジン                              108号 2016. 9. 22. ------------------------------------------------------------------------ 編集・発行 リコーダーJP http://www.recorder.jp info@recorder.jp ※このメールマガジンは、お申し込みにより配信しています。もしも間 違いやいたずらの登録により配信がなされている場合や、購読を停止 される場合は、リコーダーJPダイレクトの皆様ならば、お手数ですが、  上記 info@recorder.jp まで「メールマガジン不要」などの題でメー  ルでお知らせください。「まぐまぐ」からお申し込みいただいた皆様  は、  http://www.recorder.jp/magazine_mag2.htm  から配信停止のお手続きをお願いいたします。 ※リコーダーJPからの配信は「B.C.C.配信」です。