リコーダーJP シックハルト作品
    


トリオソナタ ヘ長調 作品16-6


Youtube のRJP応援チャンネル「リコーダーの底力」より
全曲の演奏(ノーカット)の試聴ができます。

★この曲を収録したCDつき楽譜★
ダウンロード製品  620円(税込)
2335 リコーダー用 2400円+税



★解題★

 J.C.シックハルトの「作品16」は、2本のアルトリコーダーと通奏低音のために書かれた12曲から成るトリオソナタ集で、1710年から1712年ごろ、アムステルダムのRogerから出版されました。

 トリオソナタはバロック室内楽の代表的編成だと言われますが、リコーダー2本と通奏低音のための曲となると、それほど多くは残っておらず、シックハルトの諸作品は貴重です。

 このソナタ集に、とくに教則的な意図は謳われてはいませんが、比較的やさしい曲からしだいに技術を要する曲へと進むようにと配慮した様子がみられ、アマチュアのための出版作品に力を入れていたシックハルトならではの作品集となっています。


★解説★

 4つの楽章から成っています。「童心に帰る」という感覚を思い出させてくれる、実にシンプルで楽しい「掛け合い」がちりばめられており、他方、切迫感のあるゼクエンツや、洒落たエピソード、みごとに広々とした開放感あふれる「サビ」など、経験豊富な大人の心を鷲づかみにする魅力をも併せ持っています。シックハルトにしか書けない個性的な傑作だと言えるでしょう。

 第1楽章はアリアと題されていて、4分の3拍子です。付点の跳ねるリズムを基調としながらも穏やかな感じのテーマは、先行する第1リコーダーを第2リコーダーが模倣ぎみに追いながら始まります。やがて第1リコーダーの呼びかけに対して「こだま」のように第2リコーダーが応ずる対話が何度も挟まれるのが、何とものどかな「童心に帰らせてくれる」趣向です。おそらくここは、第1リコーダーがいろいろ(ときには意地悪に)アドリブを行うのに対し、第2リコーダーが頑張って即応をめざす遊びでもせよというのでしょう。

 第2楽章は4分の4拍子のアントレです。「アントレ」は「入場・入り」などの意味だと思われますが、シックハルトのソナタではよく間奏曲のような位置に置かれています。さっそうとしたスピード感のある曲で、やはり終わり近くにある、第1リコーダーの歌い出しに第2リコーダーと低音が唱和するモチーフ(3回あります)では、ちょっと「童心に帰る」ような趣があるでしょう。

 第3楽章はアレグロ(快活に)4分の3拍子の長大な楽章で、本作の白眉でしょう。「童心に帰らせてくれる」という点では、冒頭のテーマからしてもう、姿といい和声構造といい単純しごくで、子供の遊び(石蹴り?のような)を思い起こさせるような愛らしさです。しかし、こういう単純な運びばかりでは大人の音楽になりませんから、やがて切迫感のある上行ゼクエンツになり、音楽を急速に引き締めて前半をしめくくります。繰り返しの後、後半は、サッと平行短調に入ってシリアスな空気に変え、一度、哀切に訴えかけるクライマックスを築きます。そしてそれに続く、かるく踊るワルツのようなエピソードの何と魅惑なことでしょう。続いてテーマが再現され、そのあと少し長めの収束‥‥というより「第2の展開部」のような部分に入っていきます。人を食ったような単純きわまる掛け合いで和ませたあと、胸に迫る上行ゼクエンツ、そしてクライマックスの広々とした開放感!しめくくりは2本のリコーダーが声そろえてピシリと姿を決めました。絶品の楽章だと思いますが、いかがでしょうか。

 第4楽章は4分の3拍子のメヌエットです。後半途中で4小節余りにわたる通奏低音の低い「ファ」の連打が、胸をとどろかせてくれるような魅惑に満ちています。「童心に帰る」なのか、あるいはむしろ「本能が目覚める」に近いことなのかわかりませんが、なにしろ、複雑にひねくった多声部音楽に食傷ぎみのバロック時代人には、さぞ心地よく「刺さった」のではないでしょうか。


★試聴ファイル★

リコーダー&MIDIチェンバロ: 石田誠司
※カッコ内の表示は「指回り難度」です。

第1楽章(B−2)
第2楽章(B−3)
第3楽章(B−3)
第4楽章(B−2)


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